なんか、不思議の国に迷い込んだみたいでワクワクする。自分でも子供みたいだと思うけど、さっきの奇抜なドリンクも、この怪しげな路地も冒険したいタチなのだ。
そして、道の半分くらい進んだころだ。ズルズルズルッという奇妙な音が聞こえた。
目を凝らせば、目の前からゴールデンレトリバーが駆けてくるのが見える。
「……犬の散歩……?」
普通はそう思うはずなのに、ゴールデンは本来飼い主に握られているはずのリードをズルズルと引きずっている。そして、一直線に私に向かってきているのだ。
「い、いやいやいやいやっ」
あんな巨体、いたいけな女子高生にはとてもじゃないが、受け止めきれない。そんな事を考えている間にも、爛々とした瞳が私を捉えて離さない。
──終わった。
私は呆然と迫り来るゴールデンレトリバーを見つめて、瞬時に終わりを悟った。
「ワウゥーーン!!」
雄叫びと共に、勢いよく上がる前足。私は受け身をとる暇もなく、全身でその巨体を受け止めた。