「私、拓海先輩のところへ行ってきます!」
意気込む私に、深海さんと空くんが笑ってくれる。2人の存在が頼もしく感じた。
「拓海くんの部屋は階段を上がって左の部屋です。行ってらっしゃい」
「頑張ってくれば?」
私の気持ちが届くか届かないじゃない。きっと、届くまで諦めない事が大切なのだ。私は強い気持ちで階段を上がる。
教えてもらった拓海先輩の部屋の前にやって来ると、扉をノックした。
「た、拓海先輩!!」
だけど、その向こうから返事は返ってこない。それに怯みながらも、もう一度拳を握りノックの準備をした。
諦めの悪さは、私の長所だ。
「め、めげませんからね!」
――ドンドンドンドンッ!!
早く出て来い、そんな気持ちを込めて強く扉を叩いた。
「こ、こらー!引きこもるなー!!」
さっきより強くノック(?)をして、私は何かのデモ隊のように叫ぶ。
私に出来る事があるのなら、私にしか出来ない事があるのなら、君が笑顔になるのなら何でもする。
──たとえ、”騒音女子高生”と言われても!
「前野 拓海ーーっ!!」
「お前、何してるんだよ……」
フルネームで拓海先輩の名前を叫ぶと、目の前の扉ではなく左側から声が聞こえた。
予想だにしていなかった方向からの返事にきょどる。
振り向けば、扉を少し開けてこちらを伺う拓海先輩と目があった。もちろん"不審者を見るような目"で。
もうこれ、何度目だろう。私って拓海先輩の中で相当な変人に映っているんだろうなぁと少し落ち込んだ。