「いつも無表情だと病気になる。たまには怒ったりしたほうがいいんだよ」
「あ……」
空くんの言いたい事が、わかった気がした。
感情を押し殺してる拓海先輩が怒ったり泣いたり、笑ったり喜んだり、もっと気持ちを出せるような存在になる。
それが、今の私に出来る事なのかもしれない。
──あれ、なんだろう。
こんなやり取りを前にも、どこがでしたような気がする。
『もし、あなたにしかできない事があるとしたら、どうする?』
『私にしかできない事?』
忘れていたあの人との会話が、このタイミングで蘇る。
『そう、世界でたった一人、あなたにしかできない事』
そう、確かにあの人は言った。
「私にしか、できない事があるって……」
「来春さん、大丈夫ですか?」
「えっ……?」
深海さんの声に我に返る。目の焦点が合うと、深海さんが私の顔を心配そうに覗き込んでいた。
「ボーっとしてたよ」
「空くん……ごめん、心配かけちゃって」
──いけない、空くんにも心配かけて、シャキッとしなきゃ。
私は無意識にギュッとペリドットのペンダントを握り締める。すると自然と心が落ち着いてきて、気持ちが前を向く気がした。
私に何が出来るのかわからないけれど、クヨクヨしてるなんて私らしくない。
『だからどうか、力を貸して』と私はペリドットのペンダントに願った。