「だから、拓海先輩は深海さんと暮らしているんですか?」
「はい。拓海くんには、他に身寄りがいません。お母様もご両親が亡くなってからは、力のせいでずっと孤独でしたから……」
──何それ、じゃあ本当に天涯孤独って事?
力があるってだけで、お母さんも拓海先輩も疎まれてきたのだろうか。
「私は拓海くんの祖父で、お母様の父にあたる方と親友だった事もあり、拓海くんの事を私も可愛がっておりました」
「なので、お母様が亡くなる時、私にとっても孫のような存在である拓海くんを引き取らせて欲しいとお願いしたのです」
拓海先輩は唯一の肉親を失ってしまったんだ。なら、優輝くんの気持ちを拓海先輩は痛いほど理解出来たはず。
だって、お母さんと会えない寂しい時間を知っているから。ううん、それ以上に……永遠に会えない悲しみも。
「それなのに私、優輝くんの気持ちがわからないとか、冷たいとか言っちゃった……」
本当、考え無しのバカだ。拓海先輩がどれほど傷ついてきたのかも知らずに酷い事を言ってしまった。
「ですが、来春さんの言葉も正しい」
「でも……」
「伝える事を臆してはいけません。拓海くんには来春さんのように、想いをぶつけ合える人も必要なのです」
想いをぶつける、そのたびに傷つけたとしても伝える事は必要なのかな。
「僕、拓海があんな風に怒ったところ初めて見た」
「うっ……」
空くんの言葉に、いっそう落ち込む。
だってそれって、私はめったに怒らない人を怒らせた、正真正銘のバカってことだ。