「ミルクティーです、どうぞ」
コトンッと、目の前にカップが置かれる。
顔を上げれば、深海さんの優しい笑顔があった。
──あ、やばい……泣く。
そう思ったらぶわっと溢れる涙。
「来春、子供みたい」
「ぐすっ、うう~っ」
空くんが服の袖でゴシゴシと涙を拭ってくれる。これじゃあ、どっちが年上かわからない。
「わわっ」
依頼人である男の子は突然泣き出した私に慌てる始末で、私って本当に何をしているんだろうとますます落ち込んだ。
「えっと……名前、聞いていい?」
「僕、優輝(ゆうき)」
「お姉ちゃんは、来春っていうんだ。急に怒鳴ってごめ……うぅっ」
今日は初バイトでバッチリ役に立つはずが、拓海先輩に酷い事を言って、みんなに心配かけてマイナスもいいとこだ。
「言い方は間違っていたかもしれませんが、来春さんの言葉は正しかったと私は思いますよ」
私の肩に手を乗せて、深海さんが気遣う様に優しく笑いかけてくれる。
「深海さん……」
「少し、拓海くんの話をしましょうか」
──拓海先輩の……話?
不思議に思いながら、深海さんがもう一つ椅子を取り出して私の隣に座るのを待った。
「拓海くんのお母さんも優輝くんのお母様と同じで、とっても忙しい方でした」
「お母さんも、鑑定士だったんですよね?」
「はい、それと同時にこの喫茶店のオーナーであり、アンティークの出張鑑定もしておりました」
じゃあ拓海先輩は、この喫茶店の次期オーナーという事になるのだろうか。というか、拓海先輩もこれから鑑定士としてやっていくのかな、なんて考える。