「この子がお母さんにちゃんと会えるまで、見届けましょうよ!」

「断る、業務外だ」

その一言に、プッチーンと頭の中で何かが切れた。

「こ、この……ブリザード男!!」

「っ……!?」

大きな声を上げた私に、拓海先輩はギョッとした顔をする。

「拓海先輩は誰かを幸せにする素敵な仕事をしてるのに、業務外って……利益の事しか考えてないんですか!?」

そこからは火山が噴火したみたいに止まらない。
ただ怒りに任せて言葉をぶつける。

「この子の気持ちを考えたら、不安なはずです!」

一人で会いに行くのに、どれほどの勇気がいるか、想像すればわかるはずなのに。

「拓海先輩は、この子の気持ちがわからないんですね。だから、そんな冷たい事が言えるんです……!」

「……お前に、何がわかる」

しまった、そう気づいたときには遅かった。

拓海先輩は苛立ったようにガタンッと席を立ち、私は謝らなきゃと拓海先輩に手を伸ばす。


「あのっ、拓海先ぱ……っ」

「……部屋に戻る」


その拒絶する一言に、私は伸ばしたままの手を力なく下ろした。

──私、いくら何でも言いすぎだ。

後悔先に立たずとはこの事で、拓海先輩は2階にある自分の部屋へと戻っていってしまった。


「私のバカぁぁぁぁぁっ」

そして、耐えきれず頭を抱えて叫ぶ。

「来春、バカ?」

「私は、ほんとーーに、バカだった!!」

「よしよし、とりあえず……座れば?」

空くんに促されて、さっき拓海先輩が座ってた席に座った。まだ残る拓海先輩の体温に、泣きたくなる。