「ママ、僕が会いに行ったら喜んでくれるかな」

「あ……」

不安げに俯く男の子に、胸がキュッと締め付けられる。お母さん、急にいなくなったんだもんね。どんな理由で出ていったのか不安なはずだ。

「これで、依頼完了だ」

「……え?」

拓海先輩の血も涙もないような一言に耳を疑った。

「あの、お金……」

「あぁ、今回は……」

どんどん話が進んでく。

──待って、待ってよ、こんなのおかしい。
そう思った私は、座ったままの拓海先輩の前に立った。

「完了って、まだ何も終わってないじゃないですか」

「何が言いたい」

「うっ……」

拓海先輩の視線が私に向けられると、その鋭さにたじろぐ。出しゃばってるってわかってる。だけどこれじゃあ、中途半端だと思う。

「今の段階では、居場所がわかっただけです!」

「それが、依頼だった」

「だからって、後は自分でなんて可哀想じゃないですか!」

「これは、ボランティアじゃない」


そんなの、わかってる。でも、そういう理屈とかじゃなくて、拓海先輩はこの人を助けたいとか、そういう気持ちにはならないのだろうか。純粋に相手を想えないのかって、私は聞いているのだ。