「詳しいんですね、拓海先輩さすがです!」
「……母さんの受け売りだ。依頼の対価にコインをもらったのがきっかけではまったらしい」
「依頼って……まさかお母さんも鑑定士なんですか?」
「……さあな」
「さあなって……」
お前に教える気は無いという煮え切らない態度に、私はムッとする。
「お前には関係ない」
関係ないって、これから一緒に働く仲間なのに。
──そっちがその気ならもういいですよー。
だなんて、意地張ってみても本当は、仲間に入れてもらえない事が寂しくて胸が痛いのだ。
「あっそうですかっ、着替えてきまーす」
──かっこよくたって、性格に難ありじゃん。
心の中で悪態をつきながら、私はバックヤードへと向かう。
「ふんっ」
ヤケクソにカフェコートに着替える。
……って、このままじゃダメだ。
気持ちを切り替えないとと思った私は、ペンダントをギュッと握った。
「大丈夫、イライラしないんだぞ、来春」
こうしてペンダントに話しかけると、気持ちが落ち着く気がする。だからこれは、私のお守りみたいな存在だ。
「笑顔、笑顔っ」
言葉にしてニッと笑ってみると、今日も一日頑張れる気がした私は、気持ちをリセットしてみんなの所へと戻った。