「拓海くん、あまり来春さんをからかってはいけませんよ」

「……そんなんじゃない」

ばつの悪そうな拓海先輩を優しく深海さんが諭した。こうして見てると拓海先輩のおじいちゃんみたいだなぁと、2人のやりとりを見つめる。

「特別な力は必要ありません。この喫茶店で私のお手伝いをしてもらいたいのです」

「お手伝い……ですか?」

「はい。始めは掃除や注文などを、おいおいコーヒーも淹れてもらえたらと思います」

あっ、それなら出来そうかも。そう思った私は前向きに検討する、という意味で深海さんに頷いてみせた。

「私も歳でして、お手伝いさんが欲しいと思っていたのですよ」

「それなら喜んで!!」

「週に何日くらい出られますか?女性ですし、時間も遅くならない方がいいですよね」

女性……そんな風に扱われるのって、どこかのお嬢様になったみたいで、気分がいい。やっぱり深海さんって紳士だと感動する。

「いくらでも出ますよ!それに、時間もみんなと同じが良いです!帰りはできるだけ大通りで帰りますから!」

褒められると悪い気はしない。だからつい、調子に乗って気前のいい事を言う。

それに、お手伝いさんが欲しいほど深海さんが困っているのなら、助けたい。だから私はバイトを引き受ける事に決めた。