「そろそろ帰るか」

そう言って先に立ち上がった拓海先輩の手を私は咄嗟に掴んだ。

「あの、待ってください!」

「……なんだ」

「えっと、これ返さなきゃ」

私はペリドットのペンダントを首から外して、拓海先輩に差し出す。

「これはやっぱり、拓海先輩の傍にあったほうがいいと思うんです」

お母さんの形見だし、それにペンダントが無くたって、私は拓海先輩の傍にいると決めたから。

「……いや、それはお前が持っていろ」

なのに、拓海先輩は私の手の中で光るペリドットの光を見つめるとそう言った。

「……え?私、このペンダントが無くても拓海先輩の傍にいますよ?」

「いや、宝石は持ち主を選ぶ。これはきっと、お前が持っていてこそ輝くんだろう」

「でも……いいんですか、お母さんの形見なのに」

「俺にとって重要なのは、ペンダントじゃなくてお前だ」

…………え。

それって、それってどういう意味ですかと尋ねたい衝動に駆られるが、思いとどまる。
答えを聞くのが、単に怖かったからかもしれない。

だって、変に期待して、そうで無かった時の胸の痛みと恥ずかしさときたら半端ないだろうから。