「なんだ」
「な、なんでもありません」
まずい、顔が熱くなる。不意打ちの落とし文句はやめてほしい。今、坂道ゴロゴロ転がり落ちるみたいに拓海先輩に心奪われてしまいそうになった。
「こ、こほん!そ、それで仕組まれた運命っていうのは?」
わざとらしく咳ばらいをして、話を変える。
「あぁ、まず母さんは、俺とお前を出会わせるために、そのペリドットの石を渡した」
「はい」
「クラウンはそのペンダントを特別気に入っていてな。お前がどこにいても、クラウンが見つけだすと踏んだんだろう」
「でも、私が近くに住んでなかったら会えなかったですよね?」
それって運命じゃなく、奇跡的な偶然なのではと思う。
「いや、お前は肺炎で入院していた。肺炎なら特別大きな病院でなくても、比較的自宅から近い病院へ入院する事が多いだろう」
まぁ確かに、すごく重い肺炎では無かったし、点滴をすればすぐに落ち着き、短期間で退院もできた。私の家の最寄駅から2駅ほどいった病院で、家からは近い場所にある。