「来春、俺等の出会いは、母さんが仕組んだ運命らしい」
「え……?」
「俺等は出会うべくして出会った……という事だ」
何も知らないただの女の子がこれを聞かされたら、なにこの変態って突っぱねる所だが。
美葉さんに言われた、『あなたは優しい女の子だから、この出会いが、私の思い描く運命となり、救いとなりますように』という言葉が頭を駆け巡る。
笑い飛ばせないほどに、私は”運命”という言葉を大事にしていた。もちろん、美葉さんが残した言葉だからだ。
「母さんは、力の事で俺が悩むだろう事を悟っていた」
「あ……それって、お母さんも同じ力があるから……」
だから、理解できたのかもしれない。前に拓海先輩も言っていた。同じ力のあるお母さんなら理解してくれるって。でも、一番傍にいてほしい時、一人だったんだって。
「お前の言った通り、母さんに残された時間は少なかった。だから自分を気遣ってくれたお前に俺を託した」
「気遣ったなんて……ただ、声をかけただけです。まさか美葉さんが亡くなってしまうほど苦しんでいた事なんて思いもしなかった。知っていたら、もっと何か出来たんじゃないかって後悔しています」
本当は自分の手で拓海先輩を守りたかったはずだった。
このペンダントをどれほどの痛みを抱えながら託したのだろう。想像すればするほど、泣きたくなる。
「……そんなお前だから、母さんはそのペリドットの石を託したんだろうな」
「そんな私って……」
「……つまり、優しいって事だ」
「ええっ!」
まさか、拓海先輩から優しいなんて言われるとは。驚いて、拓海先輩の顔をガン見してしまう。