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突然、微動だにしなくなった拓海先輩の名前を私は必死に呼んでいた。ふとした瞬間に、拓海先輩を遠くに感じる事がある。それはきっと、誰にもない力を持ち、無意識に人を遠ざけるからなのだろう。

だから、怖くなる。
私の前から、消えてしまいそうで。

「っ、来春……」

ハッとしたように、拓海先輩は私を見た。

──良かった……やっと、目が合った!

ホッとした瞬間、目からブワッと涙が溢れる。

「お、おい、お前泣いてるのか……」

「拓海先輩のせいですよ!!突然目開けたまま寝ちゃうとか、心配するので止めてくださいよ!」

私が泣いて、動揺している拓海先輩に私は構わずキレた。

「待て、俺は寝ていない」

「いーえ、目を開けたまま、あちらの世界に逝っちゃってましたよ!」

「……どちらの世界だ」

拓海先輩にお前のせいで疲れた、みたいな目を向けられる。それに呆れて、涙も引っ込んだ。心配させたのは拓海先輩なのに、と心の中で文句を言いつつ、とにもかくにも、拓海先輩が正気に戻って安心した。

「で、突然どうしたんです?」

「あぁ、このペンダントの鑑定ができた」

「……え!」

──なぜ今、突然!?

でも待って、という事は拓海先輩がお母さんの存在を受け入れられたという事なのでは……。
そう思ったら、喜びが噴水のように湧き上がってくる。