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光が瞬いたと思ったら一瞬で、俺の意識はどこかへと引っ張られる。懐かしい、パラパラと聞こえる何十、何千もの紙が暗い空へと吸い込まれていく音。
気づけば、俺は暗い闇の底へと落ちている。
──どうして、俺はここに……?
目の前にいたはずの来春の姿がない事に不安を覚える。
この紙は依頼品に宿る記憶と感情だ。
──まさか……これは、あのペリドットの宝石に宿るエピソード達なのか?
今まで見る事も聞く事も出来なかったのに。
本当に知りたいものを鑑定出来る時がついに来たのだ。
──だとしたら、俺は……何を願う?
どの記憶と感情に触れたいと思っているのか。あいつは、母さんに向き合えと言っていた。これは、あの人を知るチャンスなのかもしれないと思った。
──だとしたら俺は……ずっと知りたかった事があったはずだ。
そう、いつもは考えないように心の奥底に蓋をしてきた想い。
「母さんは、俺を……」
言葉にするのは、その弱さを認めるようで怖い。だが、来春が言ってくれたのだ。弱い事は決していけない事じゃないと。みんなそうなのだから、向き合えと。
決して一人じゃないから、傍にいるからと、そう背中を押してくれた。なら俺はもう逃げてはいけない、そう思った。