「そうなるのも無理ありません。ただ、私どもに言えるのは、これが現実だという事」
深海さんまで、これが事実だと言う。
「ここは、拓海くんの鑑定を必要としている依頼人が訪れる、喫茶店なのです」
そう言われると……こんなにアンティークがある理由も、テーブル席が一つしかない異様さにも納得出来る。ここは、喫茶店としてお客さんを迎えるというより、依頼人をもてなすための場所みたいだ。
「依頼品、アンティークの記憶と感情を読み取る鑑定士、彼は裏社会では有名人ですからね」
「う、裏社会……」
──本当、拓海先輩何者!?
これが、いつも無口で人を寄せ付けない拓海先輩の秘密なのか。面倒事に巻き込まれそうな予感がして、早くも知ったことを後悔しそうになった。
「……おかしい」
拓海先輩が、急に声を発した。
「どうしたんですか、拓海先輩」
「……見えない、感じないんだ」
それは絶望感や戸惑いを含んだような、複雑な声だった。
「まさか、拓海くんに鑑定できないものがあるのですか?」
「信じられない」
深海さんも空くんも驚いているけれど、そんなに珍しい事なのだろうか。