「美葉さんは、私に拓海先輩の事を託したんだ……」

自分が死ぬとわかっていて、もう傍にいてあげられないからと、私にペンダントを渡したのかもしれない。

だからといって、私と拓海先輩が出会える確証なんてなかった。でも美葉さんにはその確信があったように思える。そんなお母さんの気持ちを、拓海先輩が知らずにいる事が悲しい。

私はいてもたってもいられなくなって、枕元の携帯を手に取る。時刻は午前2時、常識的にはまずいが私は拓海先輩に電話を掛けた。

――プルルルルッ。

『もしもし……お前、何時だと思って……』

ワンコールで、拓海先輩が電話に出る。今まで史上最上に不機嫌そうな声が電話越しに聞こえた。

「あの!話したい事があります!」

それどころじゃない私は、拓海先輩の言葉を遮る。

「お母さんの事、やっと全て思い出したんです!」

『思い出したって……そういえばお前、高熱で記憶を無くしてたんだったな』

「はい!それで話は聞いてくれるんですか、くれないんですか!?」

『とにかく……落ち着け』

まるでクレーマーのようになってしまう私を、拓海先輩が宥める。態度が悪かったのは申し訳ないけれど、それだけこっちも必死なのだ。

『なら、今から会わないか』

「……えぇぇぇっ!?」

この時間に電話かけた私が言うのもアレだけれど……。

──今、何時だと思ってるの!?
と拓海先輩の提案に驚く。