『これなあに?』

『私の王子様を……あなたが光の道に導きますように』

『王子様?』

『そう、あなたならきっと彼の光になれる』

このペリドットに込められた意味。

──そっか、美葉さんの言う王子様って、拓海先輩の事だ。

体を壊しても、拓海先輩のためにお店を守ろうと必死になっていた人だ。きっと、拓海先輩には光ある道を歩んで欲しいと願っていたはず。そして、あの言葉……。

『あなたは優しい女の子だから、この出会いが、私の思い描く運命となり、救いとなりますように』

謎の言葉を残して、美葉さんは立ち去る。ここまでが、私と美葉さんの最初で最後の出会いと別れだ。

目が覚めるとまだ空は真っ暗だった。開けっぱなしの窓から、フワリと夜風が入り込む。そのヒンヤリとした風に、少しずつ頭がハッキリしてきた。

「ん……私、夢を見てたんだ」

ただの夢じゃない、私の忘れていた記憶の夢だ。むくりと起き上がってベッドに腰掛ける。ベッドの横にある机の上に視線を向ければ、月光に照らされて、黄緑色の神秘的な光を放つペリドットのペンダントがあった。