その日の夜、私は夢を見た。緑茂る病院の中庭のベンチに腰かけて話した、あの日の記憶。

『なにか、悩み事があるの?』

愁いを帯びた背中に話しかける。

『なら、あたしがいるよ』

なにか力になれたらと、そう声をかけたのも覚えてる。

『あなたは?』

『私は、来春っていうの!!』

『そう、とってもいい名前ね』

『私は、美葉』

まさか、美葉さんが拓海先輩のお母さんだったなんて。この時の私はこの人が誰なのか、これから訪れる出会いも何もかも、知る由も無かった。

『もし、あなたにしかできない事があるとしたら、どうする?』

『私にしかできない事?』

『そう、世界でたった一人、あなたにしかできない事』

『お姉さん笑顔になるならなんでもする』

『これを預かってほしいの』

そう、ここで美葉さんは、自分のつけていたペリドットのペンダントを私に渡したんだ。