「追いかけないの?」

「……っ」

頷きながら涙が溢れる。好きな人の孤独をどうしたら埋められるのだろう。少しは近づけたと思っていた距離は、簡単に離れていく。追いかけても追いかけても、拓海先輩の心にはいつも追いつけないのだ。

「拓海くんが、美葉さんの遺品を鑑定できないのは、心がお母様の存在を受け入れていないからなのではないでしょうか」

「心が受け入れていない?」

傍に歩いてきた深海さんが悲しげに言った。
そして、空くんと同じように私の隣に立つ。

「はい、鑑定は心を覗くも同じ。そしてそれは、逆に自らの心もアンティークに見透かされるという事です」

「アンティークが、心を見透かすんですか?」

「あくまで私の考えです。アンティークは言わば人の心の現身、覗く者の心に応えた時、初めて拓海くんの鑑定は成り立つのではないでしょうか」

深海さんの言葉は難しい。だけどなんとなく、意味を捉えた。つまり拓海先輩が無意識に、お母さんの心を知る事を恐れているという事だ。

それもそうか、ずっとほって置かれたと思っていたのだから。私だって、愛されていなかったらと、怖いと思う。

「でも、拓海先輩は一人じゃないのに……」

こういう時、私はまだ頼ってもらえないのかと落ち込む。結局、この日は夕方近くになって拓海先輩は帰ってきた。一言も言葉を発さず、拓海先輩は部屋に戻ってしまい、私は言葉を交わす事すら出来なかった。