「うぅっ、はぁーい」
でもまさか、学校で人気の先輩とこうして手を重ねる日が来るとは。明日は夜道に気を付けよう。何でってそりゃあ……ファンに刺されかねないからだ。
「拓海くんは、ここの鑑定士ですよ」
──やっぱり深海さん、紳士!
何も言わない拓海先輩に見かねて、深海さんが答えてくれた。冷たくされた後だからか、深海さんの優しさが胸に染みる。
「鑑定士って美術品が本物かどうか、価値はどれ位か、確かめるアレですか?」
私は家に眠るお宝がいくらになるかで盛り上がっていた番組を思い出す。お母さんが「家にもお宝あるかしら」って言いながらよく見ていたのだ。
「拓海が鑑定するのは、依頼品に宿る記憶と感情だよ」
と、空くんが言う。
「……ワンモアプリーズ?」
空くん、そんなSFアニメじゃあるまいしと一応聞き返す。
「来春、バカ?」
「現実的と言って!!だって、そんなこと信じろって方が難しいっていうか……」
聞こえていたけれど、頭の理解が追い付かないのだ。