「でも、僕の好きなモノもわからない親なんて、最悪だ。どうせ、お金と物だけ与えておけばいいって、思ってるんだと思うよ」
「そう思われてしまうと思ったから、ご両親も空くんに秘密にしていたのでしょう」
深海さんの言う通りだ。医者という激務の中でも、空くんに贈り物を贈ったのはきっと……。
「子供を愛さない親なんていない」
時雨先輩の言葉を思い出して、私は呟く。
そう、どんな時でも忘れられない。時には憎しみを、はたまた他界して、もう二度と会えない距離に逝ってしまう悲しみを伴う事もあるけれど。切っても切れない絆が、親子にはある。
「空くん、アンティークドールを作ってた優輝くんのお母さんの事、覚えてる?」
「うん、覚えてるけど……」
「お母さん、家族と夢の間で悩んでた。きっと、空くんのお父さんとお母さんもお医者さんっていう夢と空くんとの間で沢山悩んだんじゃないかな」
これはあくまで想像で、根拠なんてどこにもないけれど。空くんの事を大切に思ってくれているはずだって、信じたっていいんじゃないかな。
「想いの形は沢山あるから。だから、お父さんとお母さんのこれが精一杯の愛情だったのかもしれないよ」
「2人は……本当にそんな気持ちでこれを贈ってくれたと思う?」
「絶対なんて言えないけど、信じたいって思う」
「そっか……」
それでもまだ、不安そうな顔をしている空くんの手を私は握った。