「ねぇ空くん、ケーキに乗りきらなくなるまで一緒に祝おうよ」
この先、何年、何十年先も、みんなとの縁がこれからもずっと続くと信じたい。私が空くんのお父さんとお母さんの代わりになんて、無責任な事も言えないけど。ずっと傍にいるから、一緒に思い出を重ねていきたいと思った。
「空、吹け」
「拓海……」
「全部、お前への贈り物だ」
「っ……うん!」
泣きそうな顔で笑う空くんが、大きく息を吸い込む。ふーっと吐いて火が消えると、私達は盛大に拍手を贈った。
「にしても、朝からケーキって、来春やっぱバカ」
「えええっ!?」
「ぷっ、嘘、嬉しい」
フォークでケーキを頬張ると空くんが笑う。今まで見た事が無い、年相応の笑顔だったように思えた。
そっか、空くんが大人っぽいのは、そうならなきゃいけない理由があったからなんだと気づく。
頼れる人が傍にいなかった、そう……拓海先輩のように。それってとっても苦しかったはずだ。
「空くーんっ」
どうしても、たくさん甘やかしてあげたくなった私は、空くんの首に抱きつく。
私がいる間は、空くんがもっと頼れるようなお姉さんになろう、そう思った。