「「「ハッピーバースデー、空!」」」

軽快なクラッカーの音とともに、朝起きてきた空くんを出迎える。空くんはパジャマ姿で、寝ぐせのついた髪を押さえながら「え?」と固まっていた。

「おはよう空くん!」

「なに、朝っぱらからどうしたの」

「いいからいいからっ」

困惑している空くんの手を引いて、テーブル席にストンッと座らせる。そこにある大きな誕生日ケーキには、『9歳の誕生日おめでとう!』と書かれたプレートと9本のカラフルなロウソクが立っていた。

「これ……」

寝ぼけていて頭がハッキリしていないのか、空くんはまだボーッとしている様子だった。空くんは説明を求めるように隣に立つマスターの顔を見上げる。

「ふふ、来春さんが考えてくれたんですよ」

「え?」

「空くんのお誕生日会です」

マスターの一言にどんどん見開かれる瞳。
空くんが驚いたように私を見る。

「空くんの誕生日、私も拓海先輩もマスターも祝いたいって思ってるよ。だって、空くんが生まれてきてくれた日だもん!」

拓海先輩が静かにロウソクに火を灯していく。
来年はまた一つ増えているであろうロウソクの炎に、私はこれから先もみんなと過ごせたらいいなと思った。