「宝石は持ち主を選ぶから、俺もこのピンクダイヤモンドに恥じないように生きていきたい」
宝石が、持ち主を選ぶのなら。私も、このペリドットの宝石に、ちゃんと認められているといいなと思った。。
自分が太陽みたいにだなんて恐れ多いけれど、光を照らしてあげたい人達がいるから。このペリドットの宝石に見合うような存在になりたいと、前を向ける気がした。
「このピンクダイヤモンドに、そう誓う事にする」
強く前を向く時雨先輩に、私まで背筋がしゃんとするようだった。たくさんのモノを失っても、人は顔を上げて笑う事が出来る。その強さこそ、どんな宝石より美しい、そう思った。
こうして、開かずの箱の謎は解けた。
その秘密箱の中は、たくさんの愛に溢れていたという素敵な結末だった。
秘密箱はフカミ喫茶店に預けていく事になった。無論、則之さんに奪われ無いよう守るためだ。
「今は……胸を張って幸せだと言うには、あまりにも辛い環境下だけどさ。それでも幸せになれるように頑張る。俺の幸せを願ってくれた人達のために」
去り際に、時雨先輩はそう言った。私たちに背を向けて、決して悲観したりせず、辛い現実へと帰える。その時雨先輩の背中は、とても大きく見えた。
「応援してます、時雨先輩!」
だからこそ、エールを贈りたい。
「っ……ありがとう!」
振り返って大きく手を上げた時雨先輩の笑顔を忘れない。この世は必ずしも温かく、幸せに溢れ、豊かなわけでもない。だからこそ人は、幸せになろうともがく。そして夢を見つけ、愛を見つけ、希望を見出すのだろうとそう思った。