「どうだろう、いつかはそうなってしまうかも。だから、出会えた事の奇跡とか完全無欠の愛って意味があるんだ」

それを贈ったお父さんとお母さんが、どれだけ時雨先輩の幸せを願っていたのかが伝わってくる。

「傍にいなくても、こうして俺を愛してくれてたんだ……」

「物は、目に見える想いらしいからな」

と、拓海先輩が言う。

──あ、それって……私が言った言葉だ。

拓海先輩が覚えていてくれてた事が嬉しくて、心がふわふわとした。

「それ、来春ちゃんの言葉だな、拓海」

「っ……なんで知ってるんだ」

普通の人にはわからない加減で、わずかに拓海先輩の視線がキョロキョロと動いている。何事も無かったかのように無表情を作ろうとしているが、かなり焦っているのがバレバレだ。

「さっき、同じ事を言われたんだよ、来春ちゃんに。でもその通りだなって」

時雨先輩はピンクダイヤモンドの輝く結婚指輪を見つめて眩しそうに目を細めた。

「子供を愛さない親なんていない。それは言葉だけでなく、こうして本人では気づかない所で、なんらかの形で、伝えてくれているんだって」

その瞳は切なげなのに、幸せそうでもあった。きっと、どちらも本当の気持ちなのだ。

「子供を愛さない親なんていない……」

空くんが誰にも気づかれないほど小さな声で呟く。それが聞こえた私は、ふと空くんに聞かされた家族の話を思い出した。

そうだ、空くんは、誕生日を祝ってくれる人なんていないって言っていた。だから、時雨先輩の言葉に何か思うところがあったのかもしれない。