「そうか、だから俺と俺の大切な人のために贈るのか……気が早いって2人ともっ」
そう笑った時雨先輩の目尻から、涙がポロポロと伝って落ちる。この指輪を付けた姿を両親が見る事はもう叶わないのだ。
一粒一粒落ちていく涙が悲しい悲しいと言っているみたいに、ただただ流れていく。
「永遠の輝きを放つダイヤモンド……お前、相当愛されてたんだな」
「え?」
時雨先輩の手の中で光るピンクダイヤモンドを見つめて、拓海先輩がそう言う。
「エンゲージリングがダイヤモンドであるのは、2人の重ねた思い出が永遠の輝きを放つダイヤモンドのように色褪せる事無く消えない事を意味する」
「わぁ、素敵ですね!」
私は両手を合わせて声を上げる。女の子がダイヤモンドに憧れるのには、そんな意味があるからなのかもしれない。
誓いの証であり、初めて持つ2人の宝物であり、それは永遠に消えない2人の想いの輝きなのだ。
「それで、このピンクダイヤモンドだが」
「あぁ、これは知ってる……」
時雨先輩は拓海先輩の言葉を遮った。その顔には生き生きとした笑顔が浮かんでいて、やっぱり宝石屋さんの息子さんなんだなと思う。
「ピンクダイヤモンドはオーストラリアの鉱山で取れるんだけど、年々産出量も減ってる。しかもこの鉱山以外で産出できる鉱山はまだ見つかってないから、奇跡の確率で取れる希少な存在なんだ」
「じゃあいつか、無くなっちゃうかもしれないって事?」
買う予定も買ってもらう予定も私には無いが、一応聞いてみただけだ。なんて、本当はいつか好きな人からプレゼントされたらいいな、なんて妄想をしてしまった。