これから通う事になるだろうバイト先には、うちの高校でひそかに人気のある、2つ年上の無口でクールなイケメン、前野 拓海(まえの たくみ)がいる。

なぜ、私がバイトをしようと思ったのか。
もちろんお金のためでも、先輩への下心でも無い、神様に誓って。

理由はこの胸元で輝く、ペリドットのペンダントだった。太陽の装飾の中に鎮座するペリドットの宝石。変わったデザインのこのペンダントは、ある人からの貰い物だ。

朧げに、覚えているのは……。

『これを、預かってほしい』

鈴のような美しい音色の声と、肌に触れたずっしりとした重みのある冷たいペリドットのペンダントの感触。

『あなたは優しい女の子だから、この出会いが、私の思い描く運命となり、救いとなりますように』

眩しい陽だまりの霞むような視界の中。あの人はそんな謎の言葉と儚い微笑みを私に残した。

あなたは誰なのか、どうして私だったのか……。
ずっと知りたかった謎を、解けるかもしれない人。

それが、拓海先輩だったのだ。

ではなぜ先輩なのか、時は拓海先輩の秘密を知った日まで遡る。