「秘密箱は内部、表面にある仕掛けを施し、その仕掛けを解かなければ開かない江戸時代の金庫みたいなモノだ」
「へぇ、江戸時代の金庫かぁ。それで、その仕掛けってなんなんですか?」
「これは割と少なめの仕掛けらしい、歌からすると4回といったところか」
──だから、その仕掛けが何なのか知りたいのに。
私は目の前の仕掛けがどう動くのか、楽しみでウズウズしていた。そんな私をよそに、拓海先輩は秘密箱を時雨先輩の手にポンッと乗せる。
「時雨、この箱開くぞ」
「本当か!?」
「本当だ。そして、それができるのもお前だけだ」
「え、俺??」
拓海先輩は一つ頷くと、空くんの方を見た。
「空、時雨と一緒に仕掛けを動かしてやれ。秘密箱は精密な仕掛けが施されている事もある、空の得意分野だろ」
「うん、任せて」
時雨先輩の傍に空くんが立ち、秘密箱に一緒に手をかけた。
「じゃあ時雨、わらべ歌を一節ごと歌え」
「わ、わかった」
──なんだか緊張する。
本当に秘密箱が開くのか、たぶん時雨くんも不安なんだ。
カタカタと震える手がそう言っている。
「横横、板は五、下に」
「横横はおそらく側面の板の事だろう、それを5m下にスライド」
「わ、わかった」
拓海先輩の指示に時雨くんが板を動かす。