次の日の昼頃、約束通り、時雨先輩は喫茶店にやってきた。テーブル席には、向かい合うように拓海先輩と時雨先輩が座り、周りを取り囲むように私と空くんが立つ。

マスターとクラウンは、カウンターからこちらの様子を見つめている。いよいよ、謎解きの時間だ。

「まず、この鍵穴はフェイクだ」

その一言から始まった。

「鍵は、別にあった」

拓海先輩は、相変わらず無表情に、淡々と説明した。それを苦笑いで見守る。

「別の鍵って?俺は、そんなモノ預かってないけど……」

「いや、よく思い出せ。お前はちゃんと預かっている」

まっすぐに見据える拓海先輩の瞳に圧倒されながら、時雨先輩は考え込むように瞳を閉じた。

「んーなんだ? 俺はいつ、鍵を預かったんだ? そんなに忘れっぽい方じゃないんだけどなぁ」

「ずっと昔から、お前の親はお前に贈っていたはずだ。いや、正確にはお前の恋人や妻といった大切な存在にも預けられるはずだった」

それに時雨先輩は思い当たる節があるのか「まさか」と呟いて弾かれたように目を開ける。