「この、中で擦れる音ってなんだろう、僕の空耳じゃないよね」

「私にも聞こえてるって。もう、何なんだろう!鍵はただの飾りなんじゃないのーっ!?」

頭がパンクしそうになって叫ぶ。
すると全員の視線が一斉に私に集まった。

「……え?」

「それ、ありえるかも」

と、空くんが頷く。

──え、冗談っていうか、勢いだったんだけどな。

まさかの、ビンゴかと、言った私自身が驚いた。

「待てよ、あのわらべ歌……時雨、覚えてるか?」

「あ、うん……横横、板は五、下に、全員そろってさぁ左、もう一度全員さぁ右に、秘密のお箱がさぁ開くよ……だけど?」

「そうか、だから鍵なのか……理解した」

拓海先輩の顔を見れば、謎が解けたのだとわかった。これから種明かしが始まろうとしたところで、カランッカランッと喫茶店の扉が開く。

「時雨、迎えに来たぞ。どうだ、箱は開いたかな?」

そこへやってきたのは、則之さんだった。
一度本性を晒した相手に、よくまたいいお父さん風に笑って登場できるなと呆れる。

「則之さん……」

「時雨、お父さんの質問に答えなさい」

「それは……」

突然現れた則之さんに、時雨先輩は頭が真っ白になってしまっているようだった。このまま箱が開いたりしたら、中身は確実に、則之さんに奪われてしまう。

──どうしよう、なんとかしないと!