「この箱の中身が、どんなモノであっても、俺にとって大切なモノに変わりない。何があっても、守るよ」

時雨先輩の答えに「上出来だ、引き受ける」と拓海先輩は不敵に笑う。

拓海先輩、前より仕事の時の表情が明るくなったな。それが気のせいでなければいいと、心から思った。

「ありがとう、拓海」

「じゃあ、箱を渡せ」

時雨先輩は言われた通りに、箱を渡す。仕切り直してテーブルに箱を置くと、みんなでそれを囲った。

「それにしても、どうしたら開くんだろう」

「僕にもわからない」

一緒に首を傾げる私と空くんに「そもそも、アンティーク調の鍵と赤麻柄の箱の組み合わせがめずらしいですね」と深海さん。

「もしかして……鍵穴はフェイクなんじゃない?」

「空くん、どういう事?」

ハッとしたような顔で箱を持ち上げる空くんに尋ねる。

「全体的にこの箱軽いし、この鍵穴以外は木で出来てるのは間違いなさそう。あとは……」

空くんは箱を揺する。するとカチャカチャとなにかが擦れる音と、カランッカランッと中で転がるような2つの音が聞こえる。