「いっ、痛い!相変わらず横暴ですね、拓海先輩は!この時雨先輩を見習ってくださいよ!」
「え、いや俺は……」
「これですよ!!拓海先輩は謙虚さに欠けてます!」
ビシッと拓海先輩を指させば、余計なお世話だと言わんばかりの顔で睨まれる。
「お前は、女らしさに欠けてるけどな」
「……はい?」
「わーわー叫ぶわ、駆け回るわ」
「私はそんな事してません!慎み深い乙女ですーっ!」
「慎み深さの意味を辞書で引いてこい」
ガヤガヤ言い合っている私たちを見て、「ぷっ」と時雨先輩が吹き出す。
「ぷっ、あははっ、いつもこんなコントを?」
「笑うな、時雨、コントじゃない」
「だって、拓海さん達見てるとコントみたいで面白くって」
「拓海でいい」
「え……あ、ありがとう、拓海」
2人が穏やかに話してる。
──ついに拓海先輩にもお友達がっ。
私は拓海先輩のお母さんにでもなったかのような気分で、感動して涙が出そうになった。
「拓海、改めて頼みたい。どうかこの箱を開けてほしい」
「……それで、さっきの問いの答えは?」
拓海先輩の問い。それはこの箱が開いて、中身を義父に渡せと言われたらどうするのか、というやつだ。