「拓海先輩も、孤独でした」
「え……?」
「お父さんは離婚していないし、お母さんも過労で亡くしています。そんでもって、あんな特別な力まであるから、周りからは変な目で見られたりして」
だから、ずっと孤独だった。
きっと誰よりも時雨先輩を理解できる。
「拓海さんも、俺と同じ……」
「ちょっぴり違います」
「え??」
どういう事かと、時雨先輩が私を見る。
拓海先輩には無くて時雨先輩にはあったもの、それは……。
「時雨先輩には、愛された記憶があります。ここに、その証もあります」
時雨先輩の手の中に、赤麻柄の和風な箱がある。
それに、そっと手で触れた。
拓海先輩みたいな特別な力がなくてもわかる。
この依頼品から伝わるお父さんとお母さんの想いが。
「物は目に見える想いだと、思うんです」
「目に見える想い……」
「お父さんとお母さんが、時雨先輩に残した想い。それはかりそめの居場所以上に、価値があるとは思いませんか?」
「……!」
時雨先輩は、ハッとしたような顔をする。