「俺は、一人になる事が怖いんだ。施設が嫌ってわけじゃないけど、ただ家族っていう消えない居場所が欲しかった」
居場所が欲しいと思う事は、いけない事だろうか。家族、学校、バイト先、恋人でもなんでも、その中に誰しもが自分の居場所を探している。
誰しもが抱く、ごく普通の感情だ。
「怖くていいんです、弱くたっていい」
だって、そんな事に慣れなくていい。自分の気持ちを偽り続けたら、いつの間にか本心が見えなくなってしまう。そう思ったら自然とそう口にしていた。
「だって、当り前じゃないですか!」
「え?」
「大切な人を、永遠にあると信じていた居場所を失ったんです。誰だって不安になります」
どれだけの悲しみだろう。会いたかった人たち、帰ってくるはずの人たちが形見だけを残して逝った事。
同じ痛みを理解しようだなんて、きっと無理なのだ。
それは、その人自身の物差しで測れるものであり、あくまで私たちは、想像する事しかできない。
それこそテレパシーとか、拓海先輩みたいな特別な力でもない限り。だからこそ、わかりたいと願う。
そのために必死に考える。
そして私ならきっと、こう思うだろう。