「まともな人だ……」

「え?」

「ご、ごめんなさい!私の周りに時雨くんみたいなまともな人がいなくって……その、感動しちゃって!」

──時雨くん、めっちゃいい人だ。

キラキラした尊敬の眼差しで時雨くんを見つめていると、時雨くんは私の顔をマジマジと見つめ返す。

「なんていうか……ぷっ、不思議な人ですね」

「え、そうですか??」

そう言われても、自分ではわからないものだ。可笑しそうに笑う時雨くんに私は首を傾げる。

「お尻、痛くないですか?上着じゃ薄くて、申し訳ない」

「やばい、深海2号って呼んでいいですか?」

普通の女の子なら確実に惚れていただろう。でも、私は何故か拓海先輩の毒舌を恋しく思っている。聞いたら聞いたでムカつくのに、不思議だ。

「え、ふかみ2号って何だろう?」と、考えている様子の時雨くんに、気になっていた事を尋ねる事にした。

「時雨くんって何歳ですか?」

「えっと、18です」

「あ、拓海先輩と一緒なんですね!年上なのにくんとかすみませんっ」

まさか、拓海先輩と同い年とは。
やっぱりフレッシュさが拓海先輩には無いんだな。こんなに違うものだろうか、主に、標準装備の笑顔とか、コミュニケーション能力とか対人関係能力とか。

「あ、私は七海 来春っていいます!ちなみに時雨く……先輩の2コ下です」

「好きなように呼んでくれていいよ、来春ちゃん。それより、聞きたい事があって……」

「聞きたい事ですか?」

「うん、拓海さんはその……どうしてあんな事を言ったんだろう」

時雨先輩はやるせない、そんな顔で空を見上げている。