「え?責めませんよ、別に」
拓海先輩の罪悪感が、少しでも軽くなるように、わざとおどけて見せる。
「なんでだ」
「だって、拓海先輩はこう言いたかったんですよね」
そう、今の厳しい言葉の裏にあるメッセ―ジ。お前の守りたいモノは、かりそめの愛か、それとも真実の愛か。
「本当に守らなくちゃいけないものは、今の偽物の居場所なんかじゃなくて、お父さんとお母さんが残してくれた想いだろって」
「…………!」
”なんでわかったんだよ”、そんな顔で拓海先輩が私を見るから、つい「あはは」と、笑ってしまう。
「私、拓海先輩の心を鑑定できるんですよ!」
「なんだ、それは」
なんでわかったかなんて、決まってる。ずっと拓海先輩を見てきたからだ。
何を考えてるのか、どうしたら笑ってくれるだろう、傷つかずにいてくれるだろうって。
だからきっと、見えない拓海先輩の本心に気づけるようになったのだ。
「でも、口下手ですよね拓海先輩って」
「おい」
「でも、拓海先輩は優しい」
「……俺を優しいだなんて言う変人は、お前くらいだ」
困惑したような瞳に、私は冷たく、そして大きな拓海先輩の手を両手で包む。