「あのですね!!」
私は則之さんに大股で近づくと、顔をズイッと近づけて、凄みながら声を張る。
「まず!空くんのピッキングでも開かない鍵なんて、この世で他の誰にも開けられません!!」
「は……何なんだ、急に」
「うちの天才リペア師ですよ!?」
私の勢いに、則之さんが若干引いてるのはわかった。これじゃあ、拓海先輩の接客うんぬんを責められない。だけど、止められなかったのだ。
「それから、拓海先輩の力を疑うのは1億歩譲って我慢する」
「1億……それ、全然譲ってないよ、来春」
空くんのそんなツッコミが飛ぶ。本当は許せない、許したくない。 だけど、私も拓海先輩の事を知らなかったら、きっとこの人と同じだったかもしれないと思ったから、”そこだけ”は譲るのだ。
「だけど、ここへ来たのはあなたの意思です!自分の決断の責任を拓海先輩に擦りつけないでください!!」
「なっ、何をムキになってるんだ、君はっ」
「ムキ?」
則之さんは、私がバカにされたと思ってムキになっているとでも思っているのだろうか。そういうんじゃない、この人は何もわかってない。