「全員そろってさぁ左、もう一度全員さぁ右に、秘密のお箱がさぁ開くよ」

──でも、この歌って……。

「何の歌??」

私は疑問を口にする。
歌詞の意味が全く想像出来ないのだ。

「それは、この箱を貰った時に教えられた歌です」

時雨くんは、遠い目で拓海先輩の持つ箱を見つめている。その眼差しは、もう会えない家族への悲しみと愛しさを含んでいた。

「それこそ、耳がタコになるくらい。でも、それが何の意味があるのか……結局最後まで教えてはもらえなかったんです」

「そうだったんだ……」

その最後は、突然やってきてしまったから。だから、声なき声を求めて時雨くんはここへ来た。常人には見えぬモノ、聞こえぬモノ、それを感じる事ができる拓海先輩に会いに。

「わらべ歌に開かずの箱……鑑定だけではわからんな」

腕を組んで天井を仰ぐ拓海先輩の眉間には、深い皺が刻まれている。

「ふんっ、結局子供だましだったのか」

則之さんのバカにするような言い方に、拓海先輩はピクリと眉を動かした。

「そこのピッキングしたガキも、君も、何も出来ないんじゃないか。最初からおかしいと思ってたんだ、アンティークに宿る記憶、想いを読み取ります?子供騙しもいいとこ……」

そこまでが、我慢の限界だった。2人の事となると私はどうも短気になるらしい。