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「時雨、お前はこの箱の鍵について聞かされているはずだ」

「なに、時雨、知っていて黙っていたのか!?」

拓海先輩の話を割るように則之さんが怒鳴る。

そんな則之さんを拓海先輩はチラリと見た。

「お前は黙っていろ」

「ななっ」

そして、本日2回目の発言禁止令が拓海先輩から発動された。その額には青筋が浮かんでいて、イライラしてるのか貧乏揺すりまでしだしている。

「え……でも俺、心当たりなくて……」

首を傾げる時雨くんに、拓海先輩はポツリと「わらべ歌」と呟いた。

「お前の両親は、わらべ歌のようなものを歌っていた。それが、お前とお前の大切な人のために贈る鍵だと」

「あっ……横横、板は五、下に」

突然、時雨くんが歌いだした。どこかで聞いた事があるような、懐かしさを感じる歌。全く知らない歌詞なのに記憶の中で引っかかるのは、昔ながらのわらべ歌が日本人の心に根付いているからかもしれない。