「おかしいな、これ少し浅い……」
──ガチャッと、鍵が開いたような音がした。
「あ、開いたのか!?貸してくれ!!」
そう言ったのは時雨くんではなく、まさかの則之さんだった。空くんの手からぶん取るように箱を手に取ると、縁に指を引っ掛けて無理やり開けようとする。しかし、箱はどこを触ってもビクともしない。
「どういう事だ、開いてないじゃないか!」
先ほどの温厚な雰囲気は微塵もない。人が変わったかのように、怒りに震えながら、則之さんは空くんを睨む。
「っ、僕は……」
その威圧感に空くんが怯えたように後ず去った。クラウンは空くんを守るように前に出ると「グルルルッ」と威嚇する。滅多に怒らないクラウンが唸るのは、初めての事だった。
空くんを庇わなきゃ、そう思って踏み出した私は「子供のお願い一つに、やけに必死だな」と言う拓海先輩の言葉で足を止める。
「な、何を言ってるんだ……?」
「あんたは、この箱の中身を知っているのか?」
射るように鋭い、拓海先輩の視線が則之さんに向けられる。それに則之さんが息を呑んだのがわかった。
「い、いや知らないが……」
「もしくは、予想がついている」
動揺している則之さんに、追い打ちをかけるように拓海先輩が責める。
……えぇっ、何それ、どういう展開?
困惑しながら拓海先輩を見れば、確信しているような迷いの無い瞳で則之さんを見据えていた。