「構造が気になるんだ。だからよく部屋の目覚まし時計とか分解して……」
「うん」
「簡単に止められないように、逃げ回る時計に改造したり」
「待って空くん、色々気になるんだけど!?」
目覚まし時計に何をしたんだろう。
というか、独学でそこまでできるものなんだろうか。
「でも、一度だけお母さんとお父さんの結婚指輪を直した事があって、それをすごく喜んでくれたんだ」
拓海先輩に負けないくらいに乏しい空くんの表情が、嬉しそうに緩む。大切な思い出を話してくれてるのだと思ったら、私まで嬉しくなって気づけば笑みが浮かんでいた。
「それがきっかけで、リペアを独学で始めたんだ」
──それが、空くんがリペアを始めたきっかけ……。
知ったんだ、自分の力で大切な人に喜んでもらえる幸せを。誰かに認められる居場所を見つけたような安心感を。
「でも、2人は忙しいしから、僕は結局一人で……。マスターが遊びに来てくれた時に言ったんだ、マスターの所にいたいって」
「2人は親戚なんだもんね」
「うん。それにマスターだけは、僕の話を聞いてくれたし、一緒に遊んでくれたから。シッターに預けるくらいならマスターの所にいたいって思ったんだ」
──そうだったんだ……私の家とは全然違うな。
私は普通の家庭に生まれて、喧嘩もするけれど家族とテレビを見たり、学校での出来事を愚痴ったり。このなにげない毎日が幸せな事だったのだと気づかされる。
だって私は、家にいて寂しいと思う事は無かったから。