「親、2人とも医者だから」
「ええっ、じゃあ忙しいんだね」
「僕に興味ないんだと思うよ。マスターに預けられるまでは、世話はシッターに任せてたし」
まるで気にしていないみたいに、他人行儀な言い方だ。こういうところ、空くんは拓海先輩に似てると思った。時折、その無表情の中に寂しさがチラついて見えるから。
「あのさ、空くんってどうしてマスターと暮らしてるの……とか、聞いてもいい?」
「それ、もう聞いてる」
「あはは、ごめん」
確かに、遠回しに聞いているようなもんだ。気を悪くさせただろうかと申し訳なく思っていると、「別にいいよ、来春なら」と言ってくれた。
「空くん……ありがと」
「別に、お礼言われるような事じゃない」
空くんも初めて会った時に比べて、随分気持ちを話してくれるようになった。懐かなかった猫が懐くって、こういう事かなんて考える。
「僕、機械とか分解したり、組み立てたりするのが好きだったんだ」
組み立てるのはよしとして、分解ってどんな小学生だ。そうツッコミたくなる衝動を抑えて「え、変わってるね」と当たり障りのない返事をした。空くんの話に茶々を入れて、想いを話そうとしてくれるせっかくの機会を壊したくなたかったからだ。