「で、はい空くん」

隣に座る空くんに手紙を渡す。空くんは年下なのにしっかり者で、リペアの事なら誰にも負けない、そんな空くんの事をこれからも頼りにしてるよ。

「ん、でもなんで手紙?」

空くんは不思議そうに受け取って、理由を尋ねてきた。

「ほら、携帯だとポチポチッってすれば文字も打てちゃうし、メールもすぐに相手に届いちゃうじゃない?」

今回のことで、気づいた事がある。

「携帯があるといつでも誰かと繋がれるし、明日でもいいかって、伝えたい事を後回しにして……。そうしているうちに、その時の気持ちが薄れちゃうんだって」

「そうですね、言わずに消えていってしまう想いも沢山あったのではないのでしょうか」

深海さんが納得したように言った。

「それに、絵文字とかスタンプって気持ちも誤魔化せるし、なんか薄っぺらいなって」

雪さんが深海さんに贈ったのは、手紙と金の懐中時計。たった2つのモノが50年もの長い年月、2人を繋いだ。

「だからね、私も日頃の感謝を自分の手で綴った手紙で伝えたかったの!その方が気持ちが伝わる気がして」

「単純なやつだな」

拓海先輩の冷たさは、通常運転だった。

「えーっ、拓海先輩にも心を込めて書いてきたんですよ!?」

落ち込みそうになっていると、向かいに座る拓海先輩が「……ん」と私に右手を差し出す。