「自分が待てなくても、きっと深海さんが来てくれるって信じてたから!!」
腰を浮かせて、身を乗り出してそう言った。そこまでするには理由があったはずだと。
「でも、遅すぎたのです、何もかも……」
「そんな……」
「もう、雪さんの気持ちを知る事は出来ません」
私の言葉だけじゃ、結局想像になってしまう。どうしたら……深海さんに笑顔を取り戻せるのか。深海さんを助けてと、縋る思いでペリドットのペンダントを握る。そんな時だ、拓海先輩がマスターの前に座った。
「忘れてないか、マスター」
「拓海くん?」
「それからお前もだ」
拓海先輩の視線が私に向く。
「え、私……?」
何の事かわからなくて、一瞬ポカンとする。すると、呆れたようにため息をついて、「なんで俺を頼らない」とそう言った。
「……あっ」
そうだ、拓海先輩がいる。この懐中時計に秘められた雪さんの想いを代弁できる人が。その事に気づいた瞬間、希望が見えた気がした。