「前園 雪は、私の祖母でして」

客間に通された私達は、東吾さんから衝撃の一言を浴びせられた。という事は雪さんは結婚していて、その子供の子供という訳で、頭のどこかではこういう可能性もあるってわかってはいた。

だけど、やっぱり信じたかったのだ。ずっと初恋の人だけを待ってるに違いないって。

でも、50年という時が経っている。現実はそんなに甘くないし、流れた時も長く、離れていた距離も大きかった。

信じて待ち続けるなんて、言葉では簡単に言えるけど、待つのも待たれるのも、想像を遥かに超える忍耐がいるのかもしれない。

「そうでしたか……」

深海さん、ショックだろうな。そう思っていた私は深海さんの次の言葉に驚いた。

「幸せになってくださっていて、ホッとしました」

「え……?」と喉まで出かかった声を押し止める。深海さんの言葉を邪魔してはいけないと思ったからだ。

「50年もあの方を孤独にしてしまっていたら、どうしようかと思っていましたから」

どうして、そんな風に言えるんだろう。愛した人が他の誰かと結ばれてしまったのに。