『はい、どちら様ですか?』
インターフォンから聞こえてきたのは、若い男性の声だった。
「私、深海 進と申します。前園 雪さんにお会いしたく、お伺いしました」
『え……深海……さんですか』
すると驚いているのか、間が生まれた。何事かと拓海先輩と空くんと目を合わせると、『すぐに伺いますっ』と言って慌てたように通話が切れる。そしてすぐに、門が開けられた。
「お待たせしました、私は前園 東吾(まえぞの とうご)と申します」
現れたのは、30代くらいの柔らかい雰囲気の男性だった。着物に身を包んでおり、どこか品を感じさせる出で立ちだ。
「さすが呉服屋さんですね、見事なお着物で」
「お褒めに預かり光栄です。そして、お待ちしておりました、深海さん」
深々と頭を下げる東吾さんに、私達の頭には沢山の「?」マークが浮かぶ。
「待っていたと言うのは……」
みんなの疑問を、代表して投げかけた深海さん。
「ここではなんですから、どうぞ中へ」
私達は疑問を胸に抱えながら、東吾さんに促されるままに屋敷へと上がらせてもらう事になった。