3日後、私たちは新幹線で京都へやってきた。

深海さんの記憶によると、雪さんの家は京都にあったらしい。その記憶を頼りに住所が変わっていない事を祈りながら、ここまで遥々やってきた。

何日もお店を空ける事はできないし、お留守番しているクラウンの事も心配なので日帰りの予定だ。

「僕、蜃気楼が見える……」

隣を歩く空くんはこの日差しにやられたのだろう、頬が赤く火照っている。

「空くん、お水飲む?」

「うん……」

私がペットボトルを渡すと、空くんは弱々しくそれを受け取ってゴクリと飲んだ。

空くんがこうなるのもわかる。今日の京都の最高気温は38℃、アイスみたいにドロドロ溶けそうなほど暑い。

5分ほど歩くと、私は道の途中で着物レンタルの看板を見つけた。

「あ、あそこ着物貸してくれるみたいですよ!」

──絶対、着たい!

まるで引き寄せられる様に足を向けた私の背に、もちろん拓海先輩の声が飛んでくる。

「ふざけるな……こんなに暑いのに着物なんか着れるか」

拓海先輩は、少しやつれた顔で却下した。インドア派だから余計なのだろう。その若さですでにフレッシュさを失っている拓海先輩の将来が心配になった。

「でも、浴衣もあるし、それなら涼しくないですか?」

「観光に来たんじゃないんだぞ、お前」

「どうせなら、楽しんだモン勝ちですよ!」

それに京都に来たのは初めてなのだ。古き良き日本の景色を、それっぽく楽しむには和装は欠かせない。