「吊り橋効果ってやつですね」

「……それは意味合いが違うだろ」

突然、拓海先輩がツッコんでくる。拓海先輩も興味ないとか言いながら、ちゃっかり聞いていたみたいだ。

「そんな苦労を重ねたからでしょう、いつの間にか雪さんが愛しくて堪らなくなっていました」

「きゃーっ」

興奮して、つい歓声を上げてしまう。恋してなくても枯れた恋心を潤して、自分も恋した気になるから恋バナは心のオアシスなのだ。

──あーっ、今、すっごく楽しいっ。

私が幸せ気分に浸っていると、空くんが毒を吐いた。

「来春、奇声上げないで」

「空くん、歓声と言ってちょうだい!」

──誰が奇声だ、誰が。

本当、深海さん以外は私への扱いが雑……いや、かなりえげつない。女の子に言う言葉じゃないと思う。

──ハッ、もしかして私、女だと思われてない?

そうだとしたら、かなりショックだ。

「そうか、だから16年間も彼氏がいないんだ……」

「ですが、この時バリスタの留学でオーストラリアに行こうと思っていた私は、雪さんのために日本に残るのか悩んでいまして」

落ち込んでいる私の横で、深海さんは完全に思い出の中にトリップしていた。