「そうですね、来春さんと同じくらいの歳の時でした、雪さんに出会ったのは」

「雪さんって言うんですね、深海さんの大切な人」

椅子を持ってきて、みんなで一つのテーブルを囲む。深海さんの作ったふわとろ卵のオムライスを食べながら、恋バナに花を咲かせる。

深海さんはコーヒーだけでなく、料理の腕も一流なのだ。
クラウンも隣で、深海さん特製ブレンドのドックフードを美味しそうに頬張っている。

「雪さんと出会ったあの日、私は友人と会う予定がありまして、駅のホームで待ち合わせしていたのです。ですが、友人は降りる駅を間違えてしまったようでして」

「おっちょこちょいなんですね、深海さんのお友達」

でも、深海さんが学生の時代って確か携帯は無かったはず。電話もメールも出来ないから、場所を間違えたり、急な用事があったりした時に不便だな。

「ふふ、そうですね。なので、どんなにホームで待っていても待ち人が来なかったのです。そんな時、私と同じようにホームで人を探している彼女を見つけました」

──あ、それが雪さんだったんだ……。

なんか、雪さんのことを話す深海さんって、いつも優しいけど、滲み出る優しさが何割か増してるように見える。