「私が娘の気持ちに気付かなかった事が、そもそもの原因だろう。それなら私にも、その罪を背負う必要があると判断した」
「なら、お嬢様の事は……」
消え入りそうな声で、凪くんが不安げに尋ねる。
「私から取引先には謝っておこう、娘にはすでに許婚がいるとな」
それに、りぃと凪くんはポカンとした顔をする。少しして状況を理解したのか、2人は顔を見合わせて嬉しそうに笑顔を交わした。
「それから、拓海くんと言ったか」
突然、こっちにりぃのお父さんが声をかけてきた。真意を測るように、拓海先輩は身構える。
「……君のおかげで私は娘を不幸にせずに済んだ、感謝する」
「は……はい?」
思考が追いつかないのか、固まる拓海先輩。あんな険悪な態度だったから、まさか感謝されるとは思っていなかったんだろう。驚いてる拓海先輩に、私は誇らしさと嬉しさがこみ上げる。
「みなさんがいなかったら、罪を抱えたまま、後ろめたさにきっと耐えられなくなっていたと思います」
「ありがとう、来春、拓海先輩!それから空くんもね」
りぃと凪くんが、寄り添いながらお礼を言ってきた。
「いや、俺は別に……」
そう言いながらも、拓海先輩が後頭部を掻いてるところを見ると、照れてるんだなってわかる。
拓海先輩が誰かに認められるのも、感謝されるのも、この人がもう一度人を信じられる糧になるのなら、全てが嬉しい、そう思った。